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3DプリンターのABSフィラメントとは?

  • フィラメント特性比較

2022.02.14 更新日:2022.02.14

昨今、ものづくりの分野で広く普及している3Dプリンター。
3Dプリンターであれば、従来の切削加工では造形が難しいとされてきたものも容易に作ることが可能であり、幅広い分野で活用されています。
そんな3Dプリンターを使用するには、「フィラメント」といった材料が必要不可欠です。
中でも「ABSフィラメント」というフィラメントが使われる場面が多いですが、それではこのABSフィラメントを使うことにはどういったメリットがあるのでしょうか。
今回はABSフィラメントの概要に触れながら、それを活用することのメリットやデメリット、ABSフィラメントを使用することによって可能になることについてなど、詳しく解説していきます。

3Dプリンター用のABSフィラメントとは

3Dプリンター用のABSフィラメント

「ABSフィラメント」とは、3Dプリンター用の材料の中でももっとも一般的な樹脂素材です。
ABSフィラメントは耐久性や耐熱性に優れている上、粘り強い性質を持っていることから、試作品から治具、最終製品まで幅広い用途に対応できる汎用性の高い材料として広く普及しています。
また、3Dプリンター用の材料として初期からあるフィラメント素材で、さまざまなタイプのFDM(熱溶解積層法)3Dプリンターで活用されているのも特長です。
デスクトップ型の3Dプリンターとも相性が良く、昨今ではより多くのシーンで利用されるようになりました。

ABSフィラメントのプリント性能

ABSフィラメントは素材の性質上、非常にプリントしやすい素材と言えます。
どんなエクストルーダーでも滑らかに押し出され、エクストルーダーで詰まったり固まったりすることもありません。
しかしノズルから押し出された後の扱いについては、少々難しくなります。
冷えると縮むという性質があるため、ベッドから離れてしまって、背の高いプリントではレイヤーが剥離してしまうこともあるのです。
そのためABSフィラメントにはヒートヘッドが欠かせません。
また糸引きが少ないため、通常、リトラクションはほんのわずかで良いことがほとんどです。

ABSフィラメントのメリット

ABSフィラメントを使うことには多くのメリットが存在します。
ABSフィラメントの最大の強みは、優れた機械的特性です。安価であるものが多い上、強度や耐久性に優れています。
特に耐衝撃性、耐摩耗性、靭性などが高く、加えて耐熱性にも優れています。
傷などがつくことも少ないため、特に消耗品の造形に向いていると言えるでしょう。

またABSフィラメントは正しい設定と適切な温度・湿度管理を行えば、優れたプリント適正を発揮します。
大きすぎる造形物でなければ層間接着性も良く、美しい造形が可能です。

後加工が簡単である点もABSフィラメントのメリットとして挙げられます。
表面の研磨や接着、塗装などにも対応しており、アセトンを使用すれば表面を滑らかに加工することも可能です。

またABSフィラメントは比較的安価という点もメリットと言えるでしょう。
例えばBASFから発売されている「ABS Basic」は1kg購入したとしても3,300円(税込み)と安価です。

ABSフィラメントのデメリット

多くのメリットがあるABSフィラメントですが、デメリットがまったく無いかといえば、そうではありません。
まず温度管理が難しい点が挙げられます。
ABSフィラメントはプリント時の温度設定が適切でなければ、層間接着性が悪くなったり、造形モデルにヒビが入ったりする場合があるのです。

また「反り」についても、ABSフィラメントの弱みと言えるでしょう。
ABSフィラメントは熱収縮性が高く、3Dプリンターの種類によっては造形時に形状が反ってしまいます。

ABSフィラメントの反りとその解決方法については後述いたしますので、造形時の参考になさってください。

ABSフィラメント活用で可能になること

デメリットがあるとはいえ、基本的にはメリットが多く汎用性が高いABSフィラメント。ABSフィラメントを使用することによって可能になることは多くあります。
具体的には、以下の3点が挙げられるでしょう。

製品開発の効率化

ABSフィラメントを使用することによって、製品開発の効率化を図ることが可能です。
具体的には、製品開発にかかるリードタイムの短縮といったこと。
一般的な製品開発の工程では、企画をもとにデザイン案が起こされ、モックアップなどの試作品が作られます。試作品の検証では機能や形状が繰り返し試され、何度もブラッシュアップが行われるのです。
従来、試作品の検証工程では切削加工が導入されることが一般的でしたが、ABSフィラメントで試作品を作ることによって切削加工よりもスピーディーに検証・ブラッシュアップを行うことができるようになりました。

というのも、切削加工の場合、通常1週間~数週間かかるのですが、ABSフィラメントを使用した3Dプリンティングであれば数時間~数日でデザイン案から現物をアウトプットできるのです。
こうしたリードタイムの短縮によって業務効率化を図ることができます。

パーツの軽量化

ABSフィラメントはパーツの軽量化を実現することもできます。
ABSフィラメントは耐久性や耐熱性に優れていることから金属パーツの代わりの素材として使用されるケースもあるのですが、金属よりも軽く扱いやすいため、強度を落とさずにパーツを軽くしたい時に重宝される素材と言えるでしょう。

コスト削減

またABSフィラメントを活用することによって材料代などのコスト削減効果を狙うことも可能です。
従来の切削加工で試作品を作る場合、ブロック状の樹脂を削り出して造形をすることから、そのブロック丸ごとの材料費がかかっていました。
ところがABSフィラメントによる3Dプリンティングであれば、造形したい物体の形の分だけの材料で済むことから、材料コストの削減にも繋がるのです。

ABSフィラメントで作れるもの

ABSで可能になることも多ければ、ABSフィラメントで作れるものも多いです。
具体的には「試作品(プロトタイプ)」「機能性プロトタイプ」「治具・工具など」「最終製品」などが挙げられるため、各々について解説します。

試作品(プロトタイプ)

3Dプリンターがもっとも一般的に活用されるのは、プロトタイピングでの利用です。
3Dプリンターを使った試作品開発は「ラピッド・プロトタイピング」と言われており、これは3DCADデータから素早く物体を作り出すことを指しています。
ABSフィラメントは耐久性や耐熱性、靭性などの優れた物性や豊富なカラーバリエーションから、迅速に、そしてさまざまな試作品作りに適しているといえるでしょう。

機能性プロトタイプ

ABSフィラメントでは、「機能性プロトタイプ」を作成することも可能です。
機能性プロトタイプとは、外観だけのモックアップとは異なり、しっかりと機能性を持った試作品のことを指します。
ABSフィラメントの特性である耐久性や靭性などは、駆動性などを持つ機能性プロトタイプに向いています。
またABSフィラメントが持つ耐衝撃性などは、例えば製品のカバーなどの機能性テストに適しているでしょう。
この機能性プロトタイプは最終製品の形状検証だけではなく、物性試験にも使用できます。

治具・工具など

ABSフィラメントでは、治具・工具なども作ることができます。
治具とは、加工や組み立て、検品などを行う際、部品や工具の位置を決めて固定したりする道具のことです。
治具に求められる主な機能は「とめる」ということ。パーツ同士をしっかりと固定する強度や耐久性が必要になります。
ABSフィラメントは強度や耐久性、靭性に優れているため、こうした治具にも向いている上、ボルトナットやネジなどの工具にも適しているのです。

最終製品

ABSフィラメントはその物性から、最終製品を作ることも可能です。
最終製品には強度や耐衝撃性が求められることがほとんどですが、ABSフィラメントは強度や耐衝撃性、靭性、耐熱性に優れていることから、多くの最終製品に使用することができます。
樹脂素材でなおかつ強度が欲しい、耐衝撃性が欲しい、といった場合に適している素材といえるでしょう。

ABSフィラメントの反りと解決策

製品開発を効率化したり、コストを削減したりと活用することによって可能になることが多くなるほか、作れるものも多く汎用性のあるABSフィラメント。
しかし、ABSフィラメントには「熱収縮性が高く反ってしまう」といったデメリットがあるとお伝えしました。
そもそも「反り」とはFDM(熱溶解積層法)の3Dプリンターで起きる不具合の一つで、造形物の四方が反ってきてしまうことです。

この反りについては、いくつかの解決策があります。
まず「造形プレートをよく掃除する」ということです。
造形プレートにほこりや前回のプリント時の残留物などがないかを確認し、もし汚れている場合は綺麗に掃除をしてからプリントするようにしてください。

またフィラメントは吸湿性があるため、十分に除湿されていない場所に長期間置いておくと空気中の水分を吸収してしまい、溶着力が低下。その結果、反りが起きやすくなってしまうのです。
日頃からフィラメントを乾燥剤とともに保管するなどの対策を行えば、ABSフィラメントによる反りのトラブルを低減させることができるでしょう。

ちなみにBASFから発売されている「ABS Fusion」というフィラメントはABSでありながら反りにくいといった特性を持っているため、こちらのフィラメントを導入するのも一つの手です。

ABSフィラメント選びでお悩みなら、日本3Dプリンター株式会社にお任せください!

今回はABSフィラメントの概要やメリット・デメリットなどをお伝えしてまいりましたが、ABSフィラメントにはさまざまな種類が存在します。
全般的に強度や耐衝撃性、靭性に優れていることには間違いありませんが、一つひとつのフィラメントごとにより強度に特化していたり、より靭性に特化していたりと、特性を詳細に分類することができるのです。
ABSフィラメントによって実現したい造形によって適したフィラメントが異なるため、ニーズにマッチしたものを自力で選択するのは難しいかもしれません。

もしも3Dプリンターの材料選びでお悩みの方は、日本3Dプリンター株式会社へご相談ください。
日本3Dプリンター株式会社は、自社で世界トップメーカーの3Dプリンターを複数所有しており、実際に使用した経験から各造形方式の材料特徴(樹脂~金属)などを把握し、材料選びのコンサルティングを行います。

3Dプリンターに関してはもちろん、材料に関しても専門知識を持ったスタッフが、貴社に最適なABSフィラメントをご提案いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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日本3Dプリンター編集部 BASFチーム

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