製造業の現場での普及が年々広がっている3Dプリンター。
コンピュータ上の3Dデータを物理的に加工するためのハードルが低く、迅速に製造ができる、従来の工法では難しい複雑な形状が製作できる、といったさまざまな点から、ものづくりの領域で欠かせない存在となっています。
そんな3Dプリンターでの造形に必要不可欠なのが、「フィラメント」です。
フィラメントにも多くの種類が存在しますが、中でもメジャーなのは「PLAフィラメント」と「ABSフィラメント」ではないでしょうか。
本記事では、PLAフィラメントとABSフィラメントの特徴や違いについて解説します。
ご自身が目的とする造形にどちらがマッチしているかお悩みの方は、ぜひ参考になさってください。
目次
PLAフィラメントとは?
PLAフィラメントとは、植物由来のPLA樹脂でつくられた3Dプリンター用の材料です。
PLAはポリ乳酸とも呼ばれ、植物、主にトウモロコシやジャガイモといった天然素材から抽出して作られたバイオプラスチックです。
PLA樹脂はもともと石油由来樹脂であるABS樹脂の代替品として開発されましたが、ABSに比べ熱収縮率が小さく、反りづらく扱いやすいため、3Dプリンター用の材料では多くの種類が発売されています。
また、融点が170度と比較的低く、造形時の臭いが石油系樹脂に比べ刺激が少なく、家庭やオフィス環境でも使用しやすい特徴があります。
PLAフィラメントはABSフィラメントと並んでもっとも一般的なフィラメントとして知られています。
PLAフィラメントのメリットなどをご紹介!PLAフィラメントとは?
ABSフィラメントとは?
ABSフィラメントは先述の通り、PLAフィラメントと並んで3Dプリンターの造形でよく使われる材料の一つです。
3Dプリンター用の材料としてはかなり初期からあるフィラメントで、さまざまなFFF方式3Dプリンターで使用されています。
特にデスクトップ型の3Dプリンターが登場してからは、優れた強度・耐久性をもち、削る・穴を開けるなどの加工も行いやすいため、活用される頻度が上がりました。
また、ABS樹脂は市販のプラスチック製品にも幅広く使用されているため、PLAフィラメントと比較しても私たちの生活に身近で、より一般的な樹脂と言えるでしょう。
PLAとABSの違い
PLAフィラメントもABSフィラメントもかなりメジャーなフィラメントであることがおわかりいただけたかと思いますが、活用される頻度の高いPLAフィラメントとABSフィラメントには、どのような違いがあるのでしょうか。
各々の特徴を確認しながら、その違いに触れていきましょう。
PLAフィラメントの特徴
PLAフィラメントは寸法安定性に優れています。
ABSフィラメントとは違い、熱収縮性がそこまで高くないため、反りなどの不具合も起きにくく、大きいモデルも安定して造形することが可能です。
また造形安定性にも優れており、プリントが非常に簡単で歪みやノズル詰まりといった、低価格な家庭用3Dプリンターで起きやすい問題もそれほど起こりません。
誰でも手軽に扱うことが可能です。
ただし、PLAフィラメントは一般的に熱に弱く、60℃程度でも簡単に柔らかくなります。
また「硬くて脆い」といった面もあるため、その点はデメリットと言えるでしょう。
ABSフィラメントの特徴
ABSフィラメントは機械的特性に優れています。
安価である上に強度や耐久性に優れている点が、このフィラメントがメジャーである理由でしょう。
また、正しい設定と適切な温度、湿度管理を行うことで優れたプリント適正を発揮します。大きいモデルでなければ層間接着性もよく、きれいな造形を実現できるでしょう。
しかし、PLAフィラメントではあまり起こらない反りが発生しやすく、形状や3Dプリンターとの相性によっては大きく変形してしまうことも。
また直射日光などにもあまり強くなく、耐候性や野外での使用を想定する場合は他のフィラメントを選択したほうが良い場合もあります。
PLAフィラメントの向き・不向き
先述のようにPLAフィラメントは反りが出にくい材料であるため、大きなモデルを出力するのに向いています。またスピーディーなプロトタイピングにも向いていると言えるでしょう。
さまざまな3Dプリンターで簡単に扱うことができるため、初心者の方は扱いやすいかもしれません。
ただし壊れやすく脆い性質も持っているため、強度が求められるモデルには不向きでしょう。
いつ使うべきか?
PLAフィラメントに関しては非常に扱いやすいため、「いつでも使える」と言ってしまっても良いかもしれません。大きいモデルも造形可能ということは、もちろん小さいモデルの造形も可能。
熱を加えない限りは分解しないため、耐水性にも優れており、野外用のものにも使うことができます。
強度にそれほど重きを置いていない造形であれば、PLAフィラメントで試してみても良いのではないでしょうか。
使うべきではないタイミングは?
逆に60℃以上になるものを入れて使う想定であれば、PLAフィラメントを使うことは避けたほうが良いでしょう。その温度で変形してしまう上、脆い性質があるため工具の柄や何度も落としてしまうようなパーツには使えません。
また、薄いモデルは少し曲げただけでも折れてしまうため不向きです。
ABSフィラメントの向き・不向き
ABSフィラメントは耐衝撃性、耐摩耗性、引張強度、靭性などに優れているため、さまざまなものを造形するのに向いています。機能性プロトタイプや最終品パーツなども造形可能です。
一方で、先述したように反りやすいといったデメリットもあるため、PLAフィラメントで可能である大きいモデルの造形は難しいでしょう。
いつ使うべきか?
ABSフィラメントは、落としたりする可能性があるもの、暑い環境で使うもの、比較的乱雑に扱われることが想定されるものなどに向いています。
ナイフの柄、車の携帯マウント、スマホケース、おもちゃなどが例として挙げられるでしょう。
使うべきではないタイミングは?
ちなみにABSフィラメントはヒートベッド(Heat Bed)が無いプリンターでは造形ができません。
また風が当たったり、温度を保つ装備が無い状態で大きなものをプリントしたい場合はレイヤーの剥がれや割れに注意する必要があります。
臭いが独特であるため、部屋の換気が悪い場合の使用も向いていないと言えます。
PLAかABSかでお悩みの方は、日本3Dプリンター株式会社にご相談ください!
今回ご紹介したように、PLAフィラメントにはPLAフィラメントのメリット・デメリット、ABSフィラメントにはABSフィラメントのメリット・デメリットがあります。
PLAフィラメントは初心者でも扱いやすく大きな造形にも向いている一方で熱に弱いという弱みが、ABSフィラメントは多くの造形に向いていますが反りが出やすいといった弱みがあるため、目的の造形物に何を求めるかで使い分けたほうが良いでしょう。
もしもPLAフィラメントかABSフィラメントかで悩まれている場合は、ぜひ日本3Dプリンター株式会社にご相談ください。
自社で世界トップメーカーの3Dプリンターを複数保有し、各々のプリンターでPLAフィラメント、ABSフィラメントを実際に使った経験から、貴社の課題に適したフィラメントをご提案することが可能です。フィラメントに精通した専任スタッフが、貴社の課題解決をサポートいたします