製造業をはじめとしたさまざまな分野で造形をするにあたり、今や必要不可欠となった3Dプリンター。
これまで金型で行っていた試作品づくりなどを3Dプリンターで行えるようになってから、精密な造形が可能になった他、業務の効率化も推進されています。
その3Dプリンターになくてはならないのが、材料となる「フィラメント」です。フィラメントもそれぞれ特性が異なりますが、「TPUフィラメント」はゴムの性質を生かした造形を得意としています。
本記事では、TPUフィラメントのメリットやデメリット、活用範囲などを解説。BASF社で取り扱いのあるTPUフィラメントなどもご紹介するため、TPUフィラメントの導入をお考えの方は、ぜひ参考になさってください。
目次
TPUフィラメントとは
TPU(熱可塑性ポリウレタン)フィラメントとは、ゴム系の材料の一つです。
これまでゴムの加工も金型を使った量産が主でしたが、3Dプリンターのフィラメントとして登場することで靭性や柔軟性が求められるプロトタイピングや、パーツ製造の幅を広げることに貢献しています。
TPUフィラメントは耐摩耗性、耐衝撃性、柔軟性、引張強度、耐薬品性などに優れており、3Dプリンターを活用することで1個単位からゴムパーツを作ることが可能になりました。
TPUフィラメントを活用することのメリット
TPUフィラメントを活用することには多くのメリットが存在します。具体的には「柔軟性が出る」「耐衝撃性・振動吸収性が上がる」といったことが挙げられるでしょう。各々についてご説明します。
柔軟性が出る
TPUフィラメントの一番の強みは、やはりゴム素材ならではの弾力性や柔軟性でしょう。
弾力性や柔軟性にもさまざまなものが存在し、この柔軟性を生かして機能性プロトタイプや試作品などを作ることに適しています。
ホースやカバー、キャップなどの工業製品から、サンダルや靴底など、一般消費者向け製品のプロトタイプなどがその例として挙げられるでしょう。
耐衝撃性・振動吸収性が上がる
TPUフィラメントで作られた造形モデルは、その柔らかさによって優れた耐衝撃性を発揮することでも一目置かれています。
この耐衝撃性を生かし、先述でご紹介したカバーやケースなど、品物の外装となる製品に使われることが多いです。また振動吸収性にも長けているため、柔らかく柔軟性を持つ造形モデルのプリントに向いています。
TPUフィラメントのデメリット
TPUフィラメントには注目すべきメリットが多いですが、デメリットが一切無いかというと、そうではありません。TPUフィラメントの最大の弱点は、「造形自体が難しい」という点でしょう。
TPUフィラメントは柔軟性と弾力性がある柔らかい材料であることから、積層の過程において歪んでしまう可能性があるのです。
またノズルの詰まりも、TPUフィラメントにありがちなデメリットと言えるでしょう。
FDMタイプの3Dプリンターはノズルの内部にフィラメントを押し出すギアがついていますが、フィラメントが柔らかいがためにギアの内部に絡まり、ノズルが詰まってしまうことがしばしば起こります。
TPUフィラメントのデメリットへの対策
TPUが持つデメリットは、工夫次第で解消することが可能です。例えば「押出専用ノズルを使う」「プリントスピードを調整する」「フィラメントスプールの位置を調整する」といったことが挙げられます。各々について確認してみましょう。
押出専用ノズルを使用する
TPUフィラメントで正しくプリントするためには、押出専用のノズルを使用することがおすすめです。
TPUフィラメントをはじめとしたゴム系材料は、他のプラスチックとは違い、フィラメント自体が柔らかく不安定です。
そのため、TPUフィラメントに求められるのは冷却効率やノズル径が合った押出ノズルと言えるでしょう。3Dプリンターの中にはTPU専用に冷却効率を高めた押出ノズルを備えたものもあります。
冷却効率は、加熱してさらに柔らかくなったTPUフィラメントを瞬時に硬化させるのに役立ちます。
プリントスピードを調整する
TPUフィラメントは他のフィラメントと比較して柔らかいため、プリントスピードを遅めに設定する必要があります。メーカーによって異なりますが、20mm/s、30mm/sからどんなに早くても35mm/sが理想と言えるでしょう。
プリントスピードを上げてしまうと、その分フィラメントがノズルのギアに絡まりやすくなります。
ゆっくりと積層させることでギアへの絡まりを低減させられる上、層同士がしっかりと密着して歪みも少なるのです。
TPUフィラメントの活用範囲
TPUフィラメントの活用範囲は幅広いです。例えば「工業用ゴムパーツの試作や製造」「消費者向けの製品開発」「機能性試験用パーツの製造」などが挙げられます。
工業用ゴムパーツの試作や製造
TPUフィラメントなどのゴムフィラメントは、自動車や航空機、機械産業などといった工業用のパーツ製造、試作品づくりに向いています。
こういった工業用途、特に自動車産業などではさまざまなゴムパーツに使われます。
またTPUフィラメントは優れた耐摩耗性、引張強度、靭性、柔軟性を持ち、ホースやパッキン、キャップといった柔らかさが必要なパーツに適しているのです。
消費者向けの製品開発
TPUフィラメントをはじめとしたゴム系フィラメントは、消費者向けの製品のプロトタイピングも可能です。例えば、弾力性が必要なシューズのボディやソールに、TPUフィラメントが適しています。
これまでシューズのソールなどの試作品は金型で作られていましたが、TPUフィラメントなどの材料を使えばコストやリードタイムを抑えることができるのです。
機能性試験用パーツの製造
基本的にTPUフィラメントは耐摩耗性や耐衝撃性に優れる造形が可能であることから、機能性試験用パーツにも適しています。
TPUフィラメントは作るパーツの形状によっても物性が異なるため、幅広い用途に使えることで人気が高いです。また、もちろんですが柔らかいゴム製品を作ることにも向いています。
先述したように、柔軟性や耐衝撃性を生かしたスマホケースやカバーなど、伸縮性が必要不可欠な製品に適していると言えるでしょう。
BASF社のTPUフィラメント
日本3Dプリンター株式会社と提携している「BASF社」でももちろん、TPUフィラメントの販売を行っています。いずれも機能性が高く、さまざまな製品にご利用いただけます。
3DプリンターフィラメントUltrafuse®TPU64D
こちらはショア硬度が既存のTPUフィラメントの中でも硬質なものです。
耐摩耗性や耐衝撃性はもちろん、優れた低温柔軟性や耐油性も持ち合わせており、グリップ、パッキン、クッションパーツ、シューズなどの製品に適しています。
3DプリンターフィラメントUltrafuse®TPU64Dの詳細はこちら
https://ultrafusefff.jp/product/ultrafuse-tpu64d/
3DプリンターフィラメントUltrafuse®TPU 85A
こちらのフィラメントは同社の熱可塑性ポリウレタンElastollan® をベースにしたTPUフィラメントになっています。
耐摩耗性、低温柔軟性に長け、優れた対加水分解で柔らかくのびやかな点が特長です。
層接着性がひかえめであるため、サポートを使用した場合でもそれほど苦労せずに剥がすことができます。ビルドプレートへの定着も良く、反りなどはほとんど起こりません。
3DプリンターフィラメントUltrafuse® TPU 85Aの詳細はこちら
https://ultrafusefff.jp/product/ultrafuse-tpu85a/
TPUフィラメント選びであれば、日本3Dプリンター株式会社にご相談ください!
TPUフィラメントにはさまざまな優れた特性があり、他のプラスチック材料では造形できないものでも作ることができます。
ただ、TPUフィラメントの中でも硬度が異なったり、適した3Dプリンターが違うことも。
例えば、貴社の既存の3DプリンターにどのTPUフィラメントが向いているか、自力で的確に判断することは難しいでしょう。
先述の通り、日本3Dプリンター株式会社はBASF社と提携しており、TPUフィラメントについて専門的な知識を持ったスタッフも多く在籍しています。
また自社にて世界トップメーカーの3Dプリンターを複数保有し、どの3DプリンターにどういったTPUフィラメントが適しているのかといった、実際に使用した上での知識も持ち合わせております。
3Dプリンター自体についてのさまざまな疑問はもちろん、フィラメント選びについてもサポートさせていただきますので、TPUフィラメント選びで迷われた際は、ぜひお気軽にご相談ください。