緻密な造形物をデータ一つで製作できるとして、製造業を中心に台頭を見せる3Dプリンター。
さまざまな構造のものを造形することが可能ですが、中には支え(サポート)が必要な構造も存在します。
サポート材にも種類が複数ありますが、「簡単に除去できる」として人気を誇っているのが「水溶性サポート材(サポートフィラメント)」です。
本記事では、水溶性サポート材とは何なのか、水溶性サポート材が必要な場合とはどんな時なのか、などについて詳しく解説します。
水溶性サポート材の基本について学びたい方や、水溶性サポート材の導入をお考えの方は、ぜひ参考になさってください。
目次
水溶性サポート材とは
水溶性サポート材(サポートフィラメント)とはその名の通り、「水で溶かすことのできるサポート材」のことを指します。
通常のサポート材は手で剥がしますが、それと比較するとサポート材の除去が楽です。
また造形物が複雑な構造をしており、サポート材を手で除去することができないものにも向いていると言えるでしょう。
例えば、筒状の中にサポート材をたてると、手では除去することができませんが、水溶性サポート材であれば水に溶かすことで除去することができます。
水溶性サポート材と呼ばれることもあれば、「PVA」と呼ばれることもあるフィラメントです。
水溶性サポート材が必要な場合
水溶性サポート材が必要な構造には、先述した筒状の他にもいくつか存在します。
例えば、「造形物が小さい場合」や「造形物が複雑に入り組んでいる場合」などが挙げられます。
筒状のものと併せて詳細をご説明します。
筒状の造形物の場合
造形物が筒状の場合、縦に薄く長く積層していくためサポート材が必要です。
しかし、ここに水溶性ではないサポート材を使用してしまうと、造形後にサポート材を除去することが困難になってしまいます。
棒状のものでサポート材を押し出すといった方法も考えられますが、この方法では造形物とサポート材とが乱雑に剥がされ、造形物の面を傷つけてしまいかねません。
筒状など、中が空洞になっている造形物にサポート材を使用する場合は、水溶性サポート材が適しています。
造形物が小さい場合
また造形物が小さく、造形後に手でサポート材を除去することが困難な場合も、水溶性サポート材が向いています。
モデルが小さいと手や指では隙間のサポート材が除去できないだけではなく、器具などで無理にサポート材を剥がそうとすると小さいがゆえにモデルが大きく破損してしまう可能性もあるのです。
こうなってしまっては、せっかく3Dプリンティングした労力が無駄になってしまいます。
造形物が小さく、なおかつサポートが必要な場合、水溶性のものを使用すると良いでしょう。
造形物が複雑に入り組んでいる場合
造形物が複雑に入り組んでいる場合も、水溶性サポート材が活躍します。
モデルが複雑な場合、たとえ手が届いたとしてもサポート材の除去が効率的に行えない場合も少なくありません。
水に溶かすだけで除去することのできる水溶性サポート材であれば、造形物が複雑な構造をしていても、プリント後のサポート材除去が楽に行えます。
水溶性サポート材のメリット
水溶性サポート材のメリットには、大きく分けて「除去する手間が減る」「手で除去しにくい形状に有効」「溶かしたあとの仕上がりが良い」の3つが挙げられます。
除去する手間が減る
一般的に水溶性ではないサポート材で造形物をサポートした場合、その除去に精密ニッパーやラジオペンチなどが必要になることが少なくありません。
工具を使用してサポート材を一つひとつ丁寧に除去する必要があるのに対して、水溶性サポート材は水に浸けるだけでサポート材を除去することができます。
そのため、サポート材除去にかかる手間が減ると言えるでしょう。
手で除去しにくい形状に有効
先述の通り、手作業で除去しにくい形状の場合でも、水溶性サポート材であれば水に浸けておくだけで入り組んだ部分のサポート材も除去することが可能です。
そのため、サポート材が必要な形状であるのにも関わらずサポート材を除去することが困難な構造に水溶性のサポート材を使用することで、比較的簡単にサポート材を除去することができます。
溶かしたあとの仕上がりが良い
また、溶かしたあとの仕上がりが良いのも水溶性サポート材のメリットでしょう。
水に浸けておけば水溶性サポート材の部分だけが水に反応し綺麗に剥がれ落ちるため、造形物とサポート材を剥がしたあとの面に荒れが出ません。
そのため、造形物の表面を美しく保つことができるのです。
水溶性サポート材の除去方法
水溶性サポート材の除去方法は、これまでお伝えしてきた通り、水に浸けるだけです。
水に浸けておくだけでサポート材が自然に除去されるため、造形物を出力したら水に浸けて、あとは放置するだけで問題ありません。
水溶性サポート材の課題
利便性の高い水溶性サポート材ですが、課題があることも確かです。
具体的には、以下のような課題が挙げられるでしょう。
材料費がかさむ
もちろんですが、サポート材を使用しない場合に比べると材料費がかさみます。
例えば造形物が小さく薄い場合は、その造形物そのものよりもサポート材のほうが材料費がかかる場合も。
水溶性サポート材はさまざまなメーカーから発売されており値段にも多少のばらつきがあるため、品質と値段の兼ね合いをよく検討し、選択する必要があるでしょう。
プリント時間が長くなる
また水溶性サポート材を使うことによって、造形時間にも影響が出てきます。
サポート材が多ければ、当然のことですがそのサポート材を造形する時間も必要になるため、材料費と同様にプリント時間も長くなってしまうのです。
除去に時間がかかる
水溶性サポート材は除去が簡単だとお伝えしました。
もちろん除去自体は簡単ですが、そのかわりに時間がかかってしまいます。
製品にもよりますが、水溶性サポート材を綺麗に除去するには、一晩おかなければいけないことも。
また、一度ではサポート材を完全に溶かしきることができない場合もあるため、必要に応じて水の交換をしなければいけないケースもあります。
水に浸けるだけで簡単ではありますが、スピード感を持った製品制作には向いていないかもしれません。
水溶性サポート材の課題の解決策
上記で解説した水溶性サポート材の課題は、対策がないわけではありません。
例えば、「サポート材の密度を調整する」といったことが挙げられます。
サポート材の密度を上げるとプリントが安定し造形物が綺麗にできる可能性がありますが、材料費とプリント時間が増える上、サポート材が溶けるまでに時間がかかってしまう場合もおおいに考えられるでしょう。
一方でサポート材の密度を下げると、材料消費量とプリント時間が少なくなる上、サポートの除去も密度が高かった時よりも短時間で終わらせることができます。
ただしこの方法は形状によってミスプリントを引き起こす場合もあるため、テストプリントを行う時間がある場合に導入したり、事前に専門家からアドバイスを仰ぐと良いでしょう。
水溶性サポート材選びも、日本3Dプリンター株式会社にご相談ください!
水溶性サポート材にはさまざまなメリットがあり、サポートが必要な構造の造形物にぜひ活用いただきたいものですが、その種類はメーカーによってもさまざまです。
また、すべての水溶性サポート材が貴社にある既存の3Dプリンターに適しているとは限りません。
しかし、自社の3Dプリンターの特性を見極め、最適な水溶性サポート材を選ぶのはなかなか難しい場合もあるでしょう。
日本3Dプリンター株式会社では、世界トップメーカーの3Dプリンターを多く保有しております。
実際にさまざまなサポート材を用いてテストプリントを行っているため、どういった特徴のあるプリンターにどんな水溶性サポート材が適しているのかといった専門的な知識があります。
もしも水溶性サポート材の導入でお悩みの点がございましたら、ぜひ日本3Dプリンター株式会社にご相談ください。貴社のニーズにマッチしたサポート材をご提案させていただきます。